「過去最高のマンガはなに?」聞いてみたら、名作とトラウマ作が一緒に出てきた

外国人が「過去最高のマンガはなに?」と語り合ったRedditのスレッドで、名作の名前と並んで多く語られていたのは、忘れられない読後感の数々でした。なかでも『おやすみプンプン』をはじめとする作品は、「おすすめ」という言葉では片付けられない存在として挙げられています。なぜ人は、名作と同時にトラウマを語ってしまうのか。その背景を、コメントから読み解きます。

シンプルな質問が引き起こした波紋

「過去最高のマンガはなに?」

Redditの漫画コミュニティで、そんな何気ない質問が投げかけられました。

当然、名作がずらりと並ぶ――そう思って読み始めた人も多かったはずです。

ところが、コメントを追っていくうちに、少しずつ様子が変わっていきます。

「面白かった。でも二度と読み返さない」

「読んだあと、しばらく何もできなかった」

「人には勧めにくい」

“過去最高”を挙げるはずのスレッドは、

いつの間にか、忘れられない読後体験の話で埋まっていました。

どうやらこの問いは、簡単に投げかけちゃいけなかったみたい…。

「読後、人生が重くなる漫画──『おやすみプンプン』」

名前を出した瞬間に、説明がいらなくなる作品がいくつかあります。その代表格が…

「『おやすみプンプン』。圧倒的な名作だが、数週間メンタルを破壊された。」HollowInk(182upvotes)

この「名作だが精神的にきつい」という評価は、多くのユーザーに共通しています。

「プンプンは悲しいだけじゃない。頭の中に入り込んで居座る。」neotokyoblules(141upvotes)

「読み終わって、ただ壁を見つめていた。」papercranesamurai(97upvotes)

「『おやすみプンプン』にはメンタルヘルス警告が必要。」AshenReader(64upvotes)

年齢と共に深まる作品の影響力

興味深いのは、年齢による受け取り方の違いを指摘する声です。inkandstaticは次のように分析しています。

「プンプンは年齢を重ねるほど刺さる。」(36upvotes)

これは若い頃には理解できなかった人生の苦さや複雑さが、年齢と共に共感できるようになることを示唆しています。最も印象的だったのは、BrokenCompassの複雑な感情を表現したコメントです。

「大好きだが、二度と読み返さない。」(29upvotes)

この「愛しているが再読できない」という矛盾した感情は、『おやすみプンプン』という作品の特殊性を端的に表しているのかもしれません。

「名作だが、万人向けではない」作品群

未完の名作がもたらす喪失感

プンプン以外にも「傑作ですが、テンション高く人に渡せるタイプではない」が登場しました。中でも多く挙げられたのが、三浦建太郎の『ベルセルク』です。

「『ベルセルク』は傑作だが、軽い気持ちでは勧められない。」BookishOtter(119upvotes)

特に作者の逝去による未完という事実が、読者に与える影響は大きいようです。

「『ベルセルク』は、未完だと分かって読むと本当にきつい。」GhostOfMiura(88upvotes)

同様に未完の名作として挙げられた井上雄彦の『バガボンド』についても、JustOnePanelが複雑な心境を語っています。

「『バガボンド』は美しいが、未完なのが辛すぎる。」(74upvotes)

興味深い指摘として、作品の途中での路線変更について触れるコメントもありました。panelgazerは『ヴィンランド・サガ』について次のように述べています。

「『ヴィンランド・サガ』は途中で路線変更し、脱落者が出る。」(38upvotes)

これは復讐劇から農業編へと大きく舵を切った同作品の特徴を指していますが、このような大胆な方向転換は、読者を選ぶ要因となっているようです。

理解を拒む作品たち

藤本タツキの『ファイアパンチ』については、さらに極端な反応が見られました。

「『ファイアパンチ』を読んで、漫画を読む意味を考えた。」silentpanel(52upvotes)

「『ファイアパンチ』は人を選びすぎる。」RyuNoShadow(53upvotes)

浦沢直樹の『MONSTER』についても、評価の分かれる作品として言及されています。QuietInkspillは次のように分析しています。

「『MONSTER』は名作だが、合わない人は本当に合わない。」(61upvotes)

なぜ「最高傑作」を決められないのか

ジャンルを超えた比較の無意味さ

議論が進むにつれ、そもそも「最高の漫画」を決めることの無意味さを指摘する声も上がってきました。alucard_senpaiは根本的な問題を提起しています。

「ジャンルを無視して最高傑作を決めるのは無理がある。」(156upvotes)

InkTheoryも具体例を挙げて、比較の困難さを説明しています。

「プンプンとワンピースは比較不能。」(54upvotes)

時間と共に変化する「最高」の定義

個人の成長と共に評価が変わることを指摘する声も多くありました。papercransamuraiは自身の体験を振り返っています。

「年齢とともに『最高の漫画』は変わった。」(89upvotes)

さらに深い洞察を示したのは、neotokyobluesのコメントです。

「人生の適切なタイミングで出会った漫画が最高。」(71upvotes)

これは作品の客観的な質よりも、読者の人生における出会いのタイミングが重要であることを示唆しています。

なぜRedditは"漫画を勧めるのが下手"なのか

文脈なき推薦の問題点

議論の最後に浮かび上がってきたのは、オンラインでの漫画推薦の根本的な問題でした。alucard_senpaiは改めて問題の本質を指摘しています。

「『史上最高の漫画』を聞くのは無意味。どんな物語が好きかで答えは全く変わる。」(94upvotes)

space_drifter_は、推薦する側の問題点を辛辣に批判しています。

「みんな文脈なしで、精神をえぐる漫画ばかり勧めてくる。」(61upvotes)

初心者への配慮の欠如

特に問題なのは、漫画初心者への配慮が欠けていることです。HollowInkは自身の推薦基準について語っています。

「『プンプン』は傑作だけど、漫画初心者には絶対勧めない。」(47upvotes)

BookishOtterは、オンライン推薦の根本的な欠陥を指摘しています。

「ネットの漫画おすすめが機能しないのは、誰に勧めてるのか誰も考えてないから。」(22upvotes)

トラウマ自慢大会への変質

議論の性質そのものへの批判も出てきました。neotokyobluesは、スレッドの雰囲気を鋭く分析しています。

「このスレ、おすすめというよりトラウマ共有会に近い。」(28upvotes)

RamenArchivistも皮肉を込めて同様の指摘をしています。

「『最高』ってだいたい『一番メンタルを壊された作品』って意味だよね。」(39upvotes)

最も辛辣だったのは、papercransamuraiの観察です。

「こういうスレ、結局『どれだけ重い作品に耐えたか自慢』になる。」(9upvotes)

結論:日本漫画の多様性と、それを語ることの難しさ

この議論から見えてきたのは、日本の漫画が持つ圧倒的な多様性と、それぞれの作品が読者に与える深い影響力です。『おやすみプンプン』のように精神的に重い作品から、『ONE PIECE』のような冒険活劇まで、日本の漫画は幅広いジャンルと表現方法を持っています。

問題は、これらすべてを「最高の漫画」という一つの尺度で測ろうとすることの無意味さです。このコメントが、この議論の本質を突いているのかもしれません。

「人生で一番の漫画は、ちょうどいいタイミングで出会った作品だと思う。」GhostOfMiura(12upvotes)

何より印象的なのは、精神的ダメージを受けながらも、彼らが日本の漫画を深く愛し続けていることでしょう。それこそが、日本漫画の持つ真の力なのかもしれません。


本記事の元スレッド: What's THE best manga you've ever read?