タトゥーと温泉 — 訪日外国人たちのホンネは?「文化」と「人権」の交差点を見る

日本を訪れる外国人観光客の多くが楽しみにしている温泉体験。しかし、タトゥーを入れている人々にとって、それは大きな不安要素となっています。Redditの人気スレッド「日本でタトゥーを入れた観光客の体験」には、約3,200件ものコメントが寄せられ、約5万の「いいね」を集めました。日本人とタトゥーについて、外国人はどのように考えているのでしょうか。

日本では、多くの温泉施設、銭湯、ジム、プールなどが、タトゥーのある客の入場を禁止しています。この規制の背景には、タトゥーがヤクザ(日本の組織犯罪集団)と結びついているという歴史的な文脈があります。しかし、タトゥーが個人の自由な表現として広く受け入れられている欧米諸国から来た観光客にとって、この規制は理解しがたいものです。

実際に日本を訪れた外国人たちは、どのような体験をしたのでしょうか?温泉施設はどのように対応したのでしょうか?そして、この規制は本当に必要なのでしょうか?

本記事では、2,755件のコメントを分析し、日本のタトゥー規制をめぐる複雑な現実を多角的に掘り下げます。

「22時以降なら大丈夫」— 温泉・銭湯での対応

最も多くの支持を集めたコメントは、登別の温泉での体験談でした。

俺は小さなタトゥーを入れてて、登別の温泉に行ったんだ。大丈夫か聞いたら、22時以降に来てくれって言われた。温泉を貸切状態で楽しめて、すごく良かったよ。そしたら若い男性が入ってきて、俺が小さなタオルでタトゥーを隠してるのを見て、「心配しなくていいよ、そんなこと気にするのは年寄りだけだから」って言ってくれたんだ(笑)。彼とすごくいい会話ができて、チェックアウトの時にコーラを買ってくれた。「ホストからの贈り物だよ」って言ってね。ちょっとしたカルチャーショックだったけど、その習慣は知ってたし、彼の歓迎ぶりが本当に嬉しかった!でもどこに行っても、その土地の習慣を尊重しなきゃいけないよね — nanodgb (9822 upvotes)

日本在住の外国人からも、同様の体験が報告されています。

俺は日本に住んでるんだけど、いつも22時から23時以降って言われる(全身タトゥーだらけなんだ)。(それを守れば)毎回まったく問題ないよ! — MangoKakigori (1404 upvotes)

さらに、近年の状況の変化を指摘する声もあります。

行くたびにどんどん良くなってるよ。1ヶ月の旅行から帰ってきたばかりなんだけど、5〜6箇所の温泉と銭湯に入れたんだ。俺は日本風の袖タトゥー(腕全体のタトゥー)と胸にタトゥーが入ってる。いつも妻に先に行ってもらって、大丈夫か聞いてもらうんだけど、今回は係員が「イエスとは言えないけど、見なかったことにするよ」って感じだった — tektite (725 upvotes)

「イエスとは言えないけど、見なかったことにする」という係員の対応は、非常に興味深いものです。これは、公式には禁止しているものの、実際には柔軟に対応しているという日本的な曖昧さを表しています。建前と本音の使い分けとも言えるでしょう。

もちろん、すべての施設が受け入れているわけではありません。

北日本に1年住んでたんだけど、あまり問題はなかった。俺は両腕に袖タトゥーが入ってて、電車に乗ったり、ジムや温泉に行ったりしたけど、ほとんど問題なかった。いくつかの温泉と数軒のバーには断られたけど、90%の確率で問題にはならなかったと思う。日本はタトゥーに対してどんどん寛容になってると思う — Show_boatin (620 upvotes)

温泉以外の場所での体験も報告されています。

俺は右腕に日本風の袖タトゥー、左前腕に小さなタトゥーが入ってる。それと、俺は東南アジア人でもある。場所によって反応が違ったんだ。ほとんどの温泉はタトゥーに否定的だったけど、フレンドリーなところは素晴らしかった。電車や公共の場では…興味深かったよ。ほとんどの人が俺の腕を見た瞬間に凝視して、すぐに俺の顔をちらっと見て、それから目をそらすんだ。路上でレストランやビジネスのチラシを配ってる人も、俺には話しかけてこなかった。まるで俺が存在しないかのようだった。タトゥーを隠したら、扱いは明らかに違った。タトゥーを見せてる時より友好的だったよ — Nekodon (414 upvotes)

「文化を尊重する姿勢」— 外国人の反応

日本のタトゥー規制に対して、外国人たちはどのような反応を示したのでしょうか?興味深いことに、多くの外国人は、日本の文化を尊重する姿勢を示しています。

最も多くの支持を集めたコメントの一つが、この文化の尊重を称賛するものでした。

他の国に行って、自分のやり方を受け入れてもらえないからって怒るんじゃなくて、実際にその国の生き方を尊重して理解するのは素晴らしいこと — its-the-meatman (7297 upvotes)

しかし、この「文化の尊重」という姿勢は、必ずしも単純ではありません。別のコメントは、この問題の複雑さを指摘しています。

このトピックはすごく興味深いと思う。あなたに同意するよ、彼を尊重する。でも、もしこれが同性愛嫌悪の国(カタールとワールドカップでのレインボーアームバンドみたいに)について言ったとしたら、態度が変わるのと思うね。あるいは、メキシコ人がアメリカに移民することについて話してたら、あなたのコメントはそんなに好意的に受け取られないだろうね。この二面性が興味深いと思うんだ— (2706 upvotes)

カタールでのワールドカップでは、LGBTQ+の権利を支持するレインボーアームバンドの着用が問題になりました。2022年11月のカタールワールドカップで、イングランド、ドイツ、オランダなど欧州7カ国のキャプテンが、LGBTQ+の権利を支持する「OneLove(ワンラブ)」という虹色のアームバンドを着用する計画を発表しました。しかし、カタールでは同性愛が違法であり、FIFAは大会直前に「政治的メッセージの禁止」を理由にアームバンド着用を禁止し、着用した選手にイエローカード(警告)を出すとコメントしました。

結果として、7カ国すべてがアームバンド着用を断念。多くの西側諸国は、カタールの同性愛に対する法律を批判し、「文化の尊重」よりも「人権」を優先すべきだと主張しました。しかし、日本のタトゥー規制については、「文化の尊重」が強調されます。

この二面性は、「文化の尊重」と「人権」の境界線がどこにあるのか、という根本的な問いを投げかけています。タトゥーの規制は「文化の違い」として受け入れるべきなのか、それとも「差別」として批判すべきなのか?この問いに対する答えは、人によって異なるでしょう。

タトゥーの規制については、多くの外国人が「文化の尊重」という姿勢を示しています。しかし、次章で見ていくように、この規制の根拠となっている「ヤクザとの関連」という理由そのものに、疑問を投げかける声もあります。

「なぜヤクザだけじゃないのか?」— タトゥー規制の理由

日本でタトゥーが敬遠される理由として、多くの人が「ヤクザとの関連」を挙げます。ヤクザとは、日本の組織犯罪集団のことで、伝統的に全身に入れ墨を施すことで知られています。しかし、外国人の間では、この理由に対する疑問の声が上がっています。

最も多くの支持を集めた疑問が、これです。

俺はずっと、彼らがタトゥーを嫌うのはヤクザのせいだと思ってたんだけど、明らかにギャングスターじゃない外国人のことまで気にするのはなぜなんだ?誰か知ってる? — rafaelrac (7186 upvotes)

この疑問に対する答えは、いくつかの要因が複雑に絡み合っています。まず、日本におけるタトゥーの歴史的背景を理解する必要があります。

そうだね、ちょっと古い考え方なんだけど、日本ではタトゥーは基本的にヤクザだけのもの(そして今は観光客も)なんだ。日本人もタトゥーを入れ始めてるけど、温泉の伝統はたぶんずっと続くだろうね — -yasssss- (1119 upvotes)

このコメントが指摘するように、日本ではタトゥーは長い間、ヤクザの象徴とされてきました。江戸時代には、犯罪者に刺青を施す「入墨刑」が存在し、タトゥーは犯罪者の印として機能していました。明治時代には、西洋化の一環としてタトゥーが法律で禁止されました。この禁止は1948年まで続きました。

「文化」と「人権」の交わるラインは?

日本のタトゥー規制に対する議論の中で、特に重要な問題が提起されました。それは、文化的・伝統的な意味を持つタトゥーについてです。

もしサモア人やイヌイットだったらどうなるの?タトゥーはそこでは文化と非常に密接に結びついてるんだよ。自分の文化を表現してる人を差別するのは許されるの? — (1206 upvotes)

この疑問は、タトゥー規制の根本的な問題を浮き彫りにしています。サモアやポリネシアの文化では、タトゥーは単なる装飾ではなく、家系、地位、成人の証、そして文化的アイデンティティを示す重要な要素です。同様に、イヌイットや他の先住民族にとっても、タトゥーは文化的・精神的な意味を持っています。

日本の温泉施設が、こうした文化的タトゥーを持つ人々を一律に拒否することは、文化的差別に当たるのではないか?この問いに対する答えは、簡単ではありません。

あるコメントは、この問題の複雑さを指摘しています。

文化の違いのラインと人権のラインが交わる点が、グラフ上のどこかに確実にあると思うんだ。その前は許容できるし、その後は許容できない。でも、その正確な点がどこにあって、その左右に何があるかは、明らかに人によって異なるよね — TheFoolman (1443 upvotes)

この議論には、正解はありません。しかし、一律の禁止ではなく、より柔軟な対応が求められているのは確かです。例えば、文化的タトゥーと装飾的タトゥーを区別する、タトゥーのサイズや場所によって対応を変える、あるいは時間帯や場所を限定するなど、様々な選択肢が考えられます。

実際に、タトゥーを持つ人々の中には、日本旅行を躊躇している人もいます。

俺は日本を体験するのをすごく楽しみにしてるんだけど、これが心配なんだ。両腕に袖タトゥーが入ってて、それは隠せるんだけど、首の両側にも入ってるから、それは隠すのが難しいんだよね — jorvis (1732 upvotes)

このコメントは、タトゥーを持つ外国人が日本旅行を計画する際に直面する不安を表しています。腕のタトゥーは長袖で隠せても、首のタトゥーは隠すのが困難です。このような人々は、日本の文化を体験したいと思っていても、タトゥーのために躊躇してしまうのです。

観光立国を目指す日本にとって、これは大きな課題です。2023年には、訪日外国人観光客数が2,500万人を超えました。政府は、2030年までに6,000万人の訪日観光客を目標としています。しかし、タトゥーに対する厳しい規制は、潜在的な観光客を遠ざける可能性があります。

特に、欧米諸国ではタトゥーが一般化しており、若い世代の多くがタトゥーを入れています。アメリカでは、成人の約30%がタトゥーを持っているという調査結果(2023.Pew Research Center)もあります。こうした人々が日本を訪れる際に、温泉や銭湯、ジム、プールなどの施設を利用できないとなれば、日本旅行の魅力は大きく損なわれます。

一方で、日本人の感情も無視できません。特に高齢者の中には、タトゥーに対して強い嫌悪感を持つ人が多くいます。温泉は、日本人にとって日常的なリラクゼーションの場であり、そこで不快な思いをしたくないという気持ちは理解できます。

この問題の解決には、双方の歩み寄りが必要です。日本側は、文化的タトゥーと装飾的タトゥーの違いを理解し、より柔軟な対応を検討する必要があります。一方、外国人観光客も、日本の文化的背景を理解し、可能な限り配慮する姿勢が求められます。