外国人はなぜ東京の混雑に惹かれるのか——キーワードは“混沌の中に宿る秩序”?

大都市に住む日本人なら、誰しも直撃する「混雑」。満員電車やスクランブル交差点、巨大な群衆が蠢く様子は外国人にとって、珍しい光景のようです。Redditに投稿された「日本の混雑」をテーマにしたスレッドを紹介します。 外国人たちは、この街の混沌に何を見て、何を感じたのでしょうか。

ある写真がRedditに投稿されました。それが夜の新宿駅前に広がる、おびただしい数の人々の写真です。YouTubeで予習はしていたという投稿者も、目の前に広がる光景にはただただ圧倒されたと語ります。

r/TokyoTravel スレッドのNothing could prepare me for thisより

「orimasu!」と叫んで祈るしかない。旅行者が受けた洗礼

それはまだ序の口だよ…ラッシュアワーの山手線に乗ってみな。人の上に人が押し込まれるから :D — Guru_San(185 upvotes)

アメリカの家族に東京の混雑を説明するとき、いつもMLBやNFLの試合のハーフタイムにトイレや売店に行こうとする感じだと言っている。ただし、それが街全体で、一日中ずっと続いているんだ。— witchkingreject(92 upvotes)

「どうやって電車から降りるの?」という素朴な疑問には、先輩たちから実戦的な答えが返ってきます。

sumimasen と言いながら出るんだよ。— coffeejunkie323(64 upvotes)

私は「orimasu(降ります)」と言いながら出る。— TokyoJimu(9 upvotes)

「orimasu!」と聞こえるくらい大きな声で叫んで、あとは無事に脱出できることを祈るだけだ。— Hellolaoshi(3 upvotes)

旅行者にとって、東京の混雑は理解を超えた、しかしどこか魅力的な「体験」として受け止められていることがわかります。

在住者の爆発 — エスカレーターで連鎖する怒号

一方、在住者向けフォーラムr/Tokyoに投稿されたのは、同じ混雑でもまったく質の異なる、恐怖の体験談でした。「東京の朝のラッシュアワーの怒りは、魅力的でもあり、恐ろしくもある」と題された投稿は、大江戸線のエスカレーターで起きた怒りの連鎖を生々しく描写しています。

投稿者(DannyKata85)はヨーロッパ出身の日本在住者で、「ヨーロッパでも朝は不機嫌な人が多いが、それはみんなのデフォルト状態だから爆発には至らない。でも日本、特に東京のラッシュアワーの怒りはまったく別物だ。社会的な期待に応えようと必死に耐え続けた末に爆発するから、見ていて本当に興味深い」と前置きした上で、こう続けます。

エスカレーターの一番上にいた人たちが、前の人に向かって「邪魔!」と攻撃的に怒鳴り始め、そのストレスが下へ下へと伝播して、ついにはおじさんの真後ろの男が耳元で叫び始めた。最初は「どけよ!」だったのが、だんだん巻き舌になって「死ね!!」に変わり、他にも聞き取れないような汚い言葉が飛び交っていた。— DannyKata85(投稿者本人)

しかし、そのおじさんはまったく意に介さず、エスカレーターを降りた直後に財布を確認するために立ち止まり、群衆の流れをさらに堰き止めます。数回のショルダーチャージと罵声を浴びながらも、彼は悠々とホームのベンチに座り、電車を逃した人々を横目に昼寝を始めたといいます。

この投稿に、在住者たちは次々と共感を寄せました。

みんなストレスを溜め込んでいて、発散できる機会があれば喜んで爆発させるんだよ。あのじじいはそのきっかけをくれただけだ。むしろ感謝すべきだろ。— Dry-Yogurtcloset793(35 upvotes)

東京に住んでいたよ(今は大阪)。あれは「どけ、このやろう」ラッシュアワーの頂点だ。大江戸線は断トツで最悪。東西線も酷かったが、あっちは北朝鮮の防空壕みたいな圧迫感がないぶん、みんな少しだけ余裕があった。— Deep_Impress844(31 upvotes)

定年退職したじじいが「どうせ関係ない」と決め込んだせいで1本でも乗り遅れたら、私だって爆発する。— nicetoursmeetewe(11 upvotes)

さらに、おじさんの行動を「意図的な抵抗」と読み解くコメントも注目を集めました。

あのおじさんは、何らかの理由で意図的にやっていたんだ。世界への、静かな「くたばれ」だよ。— Staff_Senyou(18 upvotes)

穏やかなはずの日本人は、なぜ爆発するのか

なぜ、これほどまでの怒りが爆発するのでしょうか。r/Tokyoのスレッドでは、この現象を日本社会の構造的な問題と結びつける分析が数多く見られました。

過労のサラリーマンは、社会的なプレッシャーで遅刻したくない。でも、自分の自由な時間がすでに貴重なほど少ないから、早く家を出たくもない。— nymeriafrost(29 upvotes)

1日は24時間しかない。仕事に追われて十分に眠れていない人もいる。少しは共感してあげてほしい。— requiemsama(21 upvotes)

一方で、怒りの矛先となったおじさんに対しては、意外な見方も示されます。

おじさんたちは、一生かけて社会のルールに従い続けて疲れ果てて、死ぬ前にできるだけ多くのルールを破りたいと思っているんだ。— bubulfrog3(14 upvotes)

社会の歯車として自分を押し殺してきたことへの反動。それが、ラッシュアワーという極限状況で、一方は怒りの爆発として、もう一方は静かなる抵抗として現れるのかもしれません。

エスカレーター論争 — 「歩くな」vs「歩かせろ」

この「エスカレーター事件」は、東京(および日本)で長年続く「エスカレーター片側空け」の是非を問う論争にも火をつけました。実は、あのおじさんはルールに従っていたのかもしれません。

大江戸線の六本木駅や新宿駅のエスカレーターには、両側に立って歩かないよう促す看板がいくつも並んでいる。あのおじさんは正しかった。歩く人たちこそ、ルールを破っている。— elitemegamanX(150 upvotes)

ほとんどの駅のエスカレーターには「歩かないで、両側に立ってください」という案内がある。これは実際、より効率的に人を流す方法でもある。つまりあのおじさんはルールに従っていた可能性が高い。— Zubon102(39 upvotes)

近年、鉄道会社などは安全上・効率上の理由から「エスカレーターでは歩かないで」というキャンペーンを展開しています。しかし現実はまったく追いついていません

「エスカレーターを歩くな」というルールは、日本全体でおそらく最も無視されているルールだ。これほどルールを守る社会なのに、このルールだけは本当に誰も守らないのが面白い。— WindJammer27(49 upvotes)

なぜ守られないのか。その答えを、あるユーザーが鋭く言い当てます。

みんな古いルール(右側を歩く)に従っていて、新しいルールに最初に従って目立ちたくないんだと思う。だから古いルールが実質的に生き続けている。— gundahir(31 upvotes)

「新しいルールに最初に従いたくない」——これは、社会的な同調圧力が強い日本ならではの逆説です。ルールを守ることを美徳とする社会が、新しいルールを守れない構造になっているのかもしれません。

なぜ外国人は東京の混沌に惹かれるのか

怒鳴り合いながらも、誰も押しのけず、電車から降りる人には自然と道を譲る。旅行者の目には非日常的なスペクタクルとして映り、在住者の目には日常的なストレスの爆発点として映る「東京の混雑」。しかしその本質は、ルールと現実の乖離、抑圧と解放の繰り返しの中に宿っています。

東京の混雑は、欧米の混雑とは根本的に違う。みんなルールを守って、気遣いがあって、静かで、体臭もない。だから全然違う体験になる。— mugenrice(7 upvotes)

少し混んでいるロンドンより、東京の方がストレスが少ない。— Unique-Bat7418(1 upvote)

混沌の中に秩序がある——それが東京の混雑が、外国人を恐怖させながらも、魅了し続ける理由なのかもしれません。

本記事の元スレッド: Nothing could prepare me for this