日本語は「世界イチ最悪な言語」?それとも“混沌と洗練が同居するジャズ”?

同音異義語に漢字の読み方…“初見殺し”だらけの日本語は「間違いなく世界最悪の言語」らしいけどどう思う?日本語学習者たちの愛憎入り混じる本音とは?

世界で最も"理不尽な言語"?

日本語学習コミュニティで、ILoveErehYaegarによる衝撃的な投稿が2,981のupvoteを集め、激論を呼びました。

間違いなく世界最悪の言語。それが日本語。1) 同音異義語が悪魔的 2) 漢字は読み多すぎ 3) 名前は読み自由すぎ 4) 助数詞。唯一マシなのは助詞だけ」

彼が挙げた「世界最悪」の理由は、多くの学習者が直面する壁でしょう。特に同音異義語の多さは、外国人学習者にとって悪夢のような存在です。「同じ音」であるにもかかわらず、文脈なしには判別不可能な単語が山のように存在します。さらに「生」という漢字には14通りもの読み方があり、「一生」「生きる」「生ビール」で全て異なる読みになるという、「初学者殺し」が山積みの日本語。外国人にとっては「狂気的な難解さ」とも言えるようです。

sukidesu420(511upvotes)の体験談は、この苦悩を端的に表現しています:

「『はし』が橋・箸・端になるって知った瞬間、『日本語って俺らをからかってるな』って確信した」

確かに、英語なら「bridge」「chopsticks」「edge」と完全に異なる音なのに、日本語では全て「はし」。アクセントの違いはあるものの、初学者がそれを聞き分けるのは至難の業です。

Some_Random_Linguist(287upvotes)は言語学的な視点から問題の本質を分析します:

「日本語の発音自体はシンプルだけど、音が少なすぎて"全部同じに聞こえる"」

日本語の音韻システムは世界の言語の中でも極めてシンプルで、基本的に「子音+母音」の組み合わせで成り立っています。英語の「street」のような子音の連続(子音クラスター)も存在しません。この単純さゆえに、使える音の組み合わせが約100音節と少なく、必然的に同じ音の単語が大量に生まれてしまうのです。

最も象徴的なのが「し」の多さ。こんな悲鳴も。

"し"多すぎ:死・詩・市・氏・史・司・師…助けて」ShiOverload(28upvotes)

これらは元々中国語では異なる音だったものが、日本語に取り込まれる際に声調(トーン)が失われ、全て「し」に収束してしまった結果といわれています。言語接触がもたらした悲劇といえるでしょう。

漢字は「敵」か「味方」か

漢字恐怖症から一転、「漢字こそ救世主」説へ

初学者にとって漢字は最大の壁です。具体例を挙げて不満を爆発させます

『生』が"せい・しょう・なま・いきる・うまれる"…って、どれか1個にしてくれ」SourCherries(97upvotes)

しかし議論が深まるにつれ、意外な擁護論が登場。ある程度日本語を習得した学習者たちは「漢字がなければ日本語は読解不可能」と主張し始めたのです。

漢字擁護派からはこんな声が。

「漢字は新しい語彙を覚える助けになる。『戦車』見た瞬間、"戦う+車=タンク"って分かる」el_farmerino(180upvotes)

これは重要な指摘です。英語では「tank」という単語から意味を推測することは不可能ですが、日本語では漢字の組み合わせから意味を類推できるのです。「電話」(電気+話)、「飛行機」(飛ぶ+行く+機械)など、初見の単語でも漢字を知っていれば意味が分かるのは大きな利点と言えるでしょう。

漢字は外国人から見るとこんなふうに見えているのかもしれません。

『漢字=日本初のデータ圧縮』って本で読んだんだよ。もうそうにしか見えない」CabbageManReturns(42upvotes)

漢字=データ圧縮は言い得て妙かもしれません。

実際、「きしゃのきしゃがきしゃできしゃした」という文は、ひらがなだけでは意味不明ですが、「貴社の記者が汽車で帰社した」と漢字で書けば一目瞭然。つまり、同音異義語の多さという「欠陥」を、漢字という視覚的な要素で補完しているわけです。これは言語の進化における見事な適応といえるでしょう。

"めちゃくちゃ"なのはどの言語も同じ

英語話者の自虐と他言語学習者からの援護射撃

議論が白熱する中、冷静な視点も登場しました。

「フランス語も英語もカオス。慣れてるかどうかの違いだけ」CursedBlackCat(96upvotes)

実際、英語話者からは自己批判的なコメントが相次ぎました。

「英語のスペルは"悪い決断の博物館"」PhonoMorph(58upvotes)

確かに「laugh」と「laughter」で全く異なる発音になる不規則性、「colonel(カーネル)」という狂気的なスペリング、「through」「though」「thought」「tough」という見た目は似ているのに発音が全く異なる単語群など、英語の不条理さも相当なものです。

フランス語学習者の立場から辛辣なコメントも。

「日本語に文句言う前にフランス語の動詞活用やれ。きっと日本に謝りたくなる」linguist_wizard(47upvotes)

フランス語の動詞活用は、人称・数・時制・法・態によって変化し、不規則動詞も多数存在します。また、97を「quatre-vingt-dix-sept」(4×20+10+7)と表現する数字システムも、論理的とは言い難いでしょう。

先程「戦車」のコメントをした日本語学習者からは、日本語の意外なシンプルさが指摘されました。

「話す日本語はヨーロッパ言語よりだいぶ簡単。不規則動詞2個、発音シンプル」el_farmerino(180upvotes、2回目の登場)

確かに日本語の動詞で本当に不規則なのは「する」「来る」の2つだけ。フランス語やスペイン語のような名詞の性別もなく、ドイツ語のような格変化もありません。この観点から見ると、日本語は驚くほどシンプルな言語といえなくもありません。

助数詞、名前、そして文脈――"日本語の沼"の構造

助数詞という創造的な地獄

でも「やっぱり、日本語って地獄!」。そう叫ばずにはいられないのが助数詞システム。

電車は"いっぽん"で車は"いちだい"って何?先生に聞いたらため息つかれた」TrainLongThing(27upvotes)

なぜ電車は「本」で数え、車は「台」なのか。しかも電車の車両を数えるときは「両」を用います。なぜうさぎは獣なのに「羽」で数えるのか(仏教の肉食禁止を回避するため、うさぎを鳥扱いした歴史的経緯があるのは有名)。これらの分類に論理性を見出すのは困難です。

そんな地獄もこんなふうに考えれば少しはラクになるかも?

「助数詞は"文法のスパイス"。入れすぎても足りなくても変」、CounterCulture(42upvotes)

確かに全部「個」でも実際理解は可能ですもんね!

日本人の名前という究極のカオス

名前の読み方については、日本人でさえ苦労している現実があります。諦めの境地に達している人も。

「日本の名前ってガチャ。同じ漢字でも読み10通りとかあって、日本人でも間違える」NameIsHard(74upvotes)

特に『翔』ね。"しょう""かける""つばさ""と"…親が思いついた読みなら何でもアリ」KanjiTorture(ペンネーム、「漢字は拷問」25upvotes)

『心愛』を"ここあ"と読むの、かわいいけど脳が割れた」NameGame(30upvotes)

だ、大丈夫だ。日本語ネイティブでもキラキラネームは読めないから!(でも心愛は当たり前のように読めるようになってしまった…)

文脈依存という日本語の本質

日本語の最大の特徴は、極度の文脈依存性です。こんな端的に表現で日本語を味わっている人も。

日本語は30%言葉、70%"空気"」SubtextEnjoyer(31upvotes)

主語の省略、語尾の曖昧さ、言外の意味の重視など、日本語はhigh-context culture(高文脈文化)の極致といえます。

↓ここまで行けたら日本語ユーザーとして一人前かも…。

「会話の"言ってない部分"まで分かった瞬間レベルアップ」HighContextHuman(22upvotes)

結論:混沌の中にある美しさ

激論の末、多くの学習者が到達したのは意外な結論でした。G6gmi5q(491upvotes)の言葉が、この議論の本質を表しています:

「全部分かるし賛成。でもそれでも日本語が好き」

Tynaria(50upvotes)は、日本語の本質を音楽に例えます。

「ハーフだけど同意。日本語はカオスだけど機能してる。ジャズっぽい

ジャズのように、一見無秩序に見えて実は高度な規則性を持ち、即興と構造が絶妙にバランスを取っている――これは日本語の本質を見事に表現した比喩かもしれません。

「世界最悪の言語」の日本語をこんなふうにとらえてくれたら最高ですね。

英語みたいに扱うのをやめた瞬間、日本語は花みたいに開く」HumbleLinguist(18upvotes)

「日本語には原則がない」と言われるほど、日本語は「理不尽な」要素を含んでいます。しかし、その「欠陥」こそが日本語の独特な表現力の源であり、2,000年以上の歴史の中で日本人が紡いできた文化の結晶なのです。「世界最悪」かもしれない。でも、その混沌の中にこそ、言語の本質的な面白さと美しさが潜んでいるのかもしれません。