「CHINDOGU」に大興奮ーーお馬鹿な発明か、天才の所業か?“珍道具”が魅せる「人間らしさ」とは

役に立つかもしれないけど、やっぱり使えない――。どうしようもない「CHINDOGU(珍道具)」という日本独特の発明文化が再び注目を集めています。Redditでは、「バカげている」派と「実は便利」派に意見が真っ二つ。

「Kawaii」や「Karoshi」のように、日本語がそのまま海外で使われる例は少なくありません。そんな中、いま英語圏のネットでじわじわ浸透しているのが「Chindogu(珍道具)」。役に立つかもしれないけど、やっぱり使えない――。そんな日本独特の発明文化が再び注目を集めています。Redditでは、「バカげている」派と「実は便利」派に意見が真っ二つ。実際に購入して試した人たちのリアルな声も飛び交いました。

90年代のトンデモ本が、なぜか話題に

Reddit上で11,064のupvoteと363件のコメントを集めた投稿が話題になっています。投稿されたのは「多くの人が密かに必要としている日本の発明品」と題された画像で、バタースティック型バター塗り器や赤ちゃん用ダストモップ、多機能ネクタイなど、一見バカげているようで実は便利かもしれない発明品の数々が紹介されています。

これらの発明品は実は「チンドーグ(珍道具)」と呼ばれる日本発の芸術運動から生まれたものです。チンドーグとは、技術的には実用的であるものの、実際に使うには馬鹿げすぎて役に立たなくなってしまう発明品を作る概念で、1990年代に『101の無駄じゃない日本の発明品』という本で世界に紹介されました。英語版のWikipediaでは「Chindogu」の項目が作られるなど、日本語由来の言葉として親しまれています。(ちなみに日本語のWikipediaには珍道具の項目はない…。)

「実は便利」派の熱烈な支持

バタースティックへの圧倒的な支持

最も多くの支持を集めたのはバタースティック型のバター塗り器でした。

「バタースティック最高!これ欲しい」flameevans(1,466upvotes)

「これがスーパーで売ってたら、毎回買うわ」Crammit-Deadfinger(309upvotes)

興味深いのは、既に類似の使い方をしているユーザーがいることです。

「実際できるよ。バターのスティックの端を開けて、パンに『塗り絵』するみたいにバターを塗るの。私はそうしてるし、うまくいく。バターを冷蔵庫に入れてる限りはね」la_picasa(188upvotes)

「バタースティックが今でもバター塗りの主流方法じゃないのが意外」Spacecow6942(27upvotes)

目薬用メガネへの切実な需要

目薬を上手に差せない人からの支持も熱烈でした。ShyGuyJeff(89upvotes)は「目薬用メガネは絶対に必要。自分で目薬をさすことができない。いつも目を閉じちゃう」と切実な悩みを告白。

これに対して↓こんな実用的なアドバイスも。できない人はやってみて。

「顔をまっすぐ上に向けて目を閉じる。目の内側の角に薬を落とす。目を開ける。これは目薬が嫌いな犬にやる方法」wine_n_mrbean(63upvotes)

あの目薬用メガネは絶対使いたい、マジで笑。目薬を差すとき絶対にびくってなっちゃうし、誰かにやってもらってもあんまり変わらないんだよね」Cattentaur

実際に購入・使用した体験談

他にも「赤ちゃんモップ」にも様々なコメントが。中には、実際にこれらの商品を購入して試したユーザーからの体験談です。Neverliz(142upvotes)は赤ちゃんダストモップについて「実際に赤ちゃんダストモップを試したことあります!🤣」と画像付きでコメント。

結果については

「完全にネタのために買った...掃除はあんまり効率的じゃなかった。🤣」Neverliz(54upvotes)

とのこと。

「効果があろうがなかろうが、笑いのためだけに赤ちゃんモップ欲しい」u/Stock-Cod-4465(33upvotes)

このコメントの通り、実用性以外の価値も認められています。これこそ珍道具の真髄かもしれません。

珍道具、10の心得

「何でもあり」のようにも思える珍道具ですが、実はかなり厳密なルールがあるようです。生みの親の川上賢司氏による、意外と厳しい「珍道具の10の心得」は下記の通り。

  1. 本気で実用化できちゃダメ
  2. でも実際に存在はしなきゃダメ
  3. ちょっとアナーキーな精神を持っていること
  4. 日常生活で使える道具であること
  5. 売り物(商品)にしちゃダメ
  6. 笑わせるためだけに作っちゃダメ(面白さはあくまで副産物)
  7. プロパガンダじゃないこと
  8. タブーに触れないこと
  9. 特許を取れないもの
  10. 偏見がないこと

「バカげている」派の冷静な分析

技術的問題の指摘

バタースティックや赤ちゃんモップに比べて、問題点が山積みだと批判が集まったのが足踏み式ヘアドライヤー。見た目もしっかりやばいけど、外での着用を前提としてるのか、これ…。

「でもあのポンプの動き方だと、後ろ向きに歩くか、めちゃくちゃぎこちなく歩かなきゃいけないよね 笑」la_picasa(17upvotes)

「その装置は足元から空気を吸い込んでる可能性が高いってことを指摘したい。髪の毛に汚れがたくさん付きそう」moldguy1(4upvotes)

実際に商品化された「珍道具」も

ペット用品として実現

おバカ一辺倒のようにも思える珍道具の中には実際に商品化されているものもあります。

「今はペット用歯ブラシのデザインとして使われてる。実際に家に2つあるし」Purple_Figure4333(34upvotes)

「指歯ブラシは確実にアメリカの刑務所で採用されてると思う。普通の歯ブラシを武器に変えられないようにするために」KenseiHimura

刑務所で指歯ブラシしてるってホントですかね…笑??

VR技術の先駆け

スレ画像にあがっていた360度カメラ装置についてもVRの先駆けになっているという考察も寄せられました。

Fogona82は「360度カメラが現実になったんだね」とコメントし、WordOfLies は「1980年の360度カメラ」と時代を先取りした発明であることを評価しています。

「これらのいくつかは調整されて今使われてる。指歯ブラシは赤ちゃんの最初の歯を磨くのにいい。カメラ装置はVR撮影に使われてる」Mstinos(17upvotes)

珍道具が意外な発明の大元になっていることを指摘しています。

セルフィースティックの先駆け

「珍道具」は発明の種になることもあります。ジョークのようなアイディアが世界中で爆発的に売れるヒット商品になった実例を指摘します。

セルフィースティックも一時期はこれらのジョーク商品の一つだった」iaresosmart(12upvotes)

実際、1980年代に、自撮り棒はその元となる「エクステンダー」として元ミノルタ(現コニカミノルタ)の上田宏氏が考案したとされています。ただ、当時は奇抜なアイデアとして扱われていました。それが2010年代にスマートフォンの普及とともに世界的なヒット商品となったのです。

結論:バカげた発明の真の価値

この議論を総合すると、日本の「珍道具」は単なるジョークグッズではなく、私たちの固定観念に挑戦する重要な文化的価値を持っていることがわかります。

「チンドーグの発明品のポイントは、不要になるように作られてるんだ」PieTeam2153(44upvotes)

と指摘するように、その「使えなさ」こそが本質なのです。

重要なのは、これらの発明品が笑いを提供するだけでなく、「本当に必要なものとは何か」「効率性とは何か」「技術の進歩とは何か」といった根本的な問いを投げかけていることです。バタースティックに対する熱烈な支持や、目薬用メガネへの切実な需要は、一見バカげた発明にも本物の問題解決のヒントが隠されていることを示しています。

デジタル技術の発展で、効率化、合理化が推し進められる現代において、珍道具はどこか愛らしい「人間らしい不完全さ」の価値を思い出させてくれる貴重な存在なのかもしれません。

本記事の元スレッドはこちら: Japanese Inventions That Many Secretly Need