議論の発端:本当に理解できないものってあるの?
ハンガリー出身のNoahDaGamer2009が投げかけた素朴な疑問から始まったこのスレッド。
「みんなの目線で、どれだけ勉強したり日本に来たりしても、結局は本当のところまで分かりきらない日本文化の側面ってある?」
この問いかけに対して、日本在住の外国人だけでなく、世界各国の人たちから様々な意見が寄せられました。中には「そんなものはない」という意見もあれば、「絶対にある」という体験談も。
圧倒的1位:オノマトペという名のラスボス
翻訳者も諦める難しさ
早速登場したのは「日本語の初学者殺し」と悪名高いオノマトペ(擬音語・擬態語)。
「文化ってほどじゃないけど、日本のオノマトペはマジむずい」HugePens(日本)
「日→独の翻訳をやってます。オノマトペは私にとってラスボスだよ」Kvaezde
ネイティブレベルでも使い分けが難しい
面白いのは、アメリカ育ちの日系2世の証言です。
「分かる。小さい頃は家で"簡易版"の日本語に触れてたけど、大人になってもオノマトペの溝は埋まらん」Wentailang
もはや諦めの境地に達している外国人も。
「英語ネイティブでN1持ち。日本在住歴もあって、ほぼ全ての友だちとは日本語だけ。いま漢検の勉強中。だけどオノマトペは基本あきらめた。超基本は覚えるけど、それ以外は…知らないままでもいいやって感じ」Triddy
「メソメソ、ルンルン、ゴロゴロ、コロコロ…」ClessxAlghazanth
想像の20倍存在する
イギリス在住のhyouganofukurouは、オノマトペの奥深さについてこう分析しています。
「想像してる数の20倍はある。しかもネイティブは新作をその場でスッと作っても大体伝わる。文脈から推せることも多いけど、英語話者はオノマトペを口にする習慣がないから、ネイティブ並みに使うのは難しい。自分も日本語は話せるけど、ネイティブに比べるとオノマトペや和製英語の使用頻度はかなり低い」
でも一方で、An-kunのように家族から覚えた人は違った見方をしています:
「自分はそこまで難しいと思ってないかな。というのも"普通の"学び方じゃなくて、家族から常に浴びせられて覚えたタイプ。むしろ最近は和製英語のほうが困る。『カーテン』とか聞き取れる発音に落ち着くまで4回くらい言い直す。」
意外に複雑:ヤクザとの微妙な距離感
生活に溶け込んだ不思議な存在
honeylemonnyが挙げたのは、外国人には説明しにくい微妙な話題でした。
「『完全に理解できない文化』という質問に答えるとすると、ヤクザ(反社)との距離感は言葉にしづらいし、理解もさらに難しいと思う。近所にヤクザの分家があって、よくバーベキューしててスーツ姿の人たちが出入りしてた。小さい頃から存在は普通に知ってた。無害だったけどね。」
さらに祖父の話も。
「祖父も賭場で一緒にいた可能性がある(大きな刺青があった。建設業の人は事故で身元不明になったときのために刺青を入れた時代でもあった。実際それが原因で亡くなった)。小指もなくて『いつでももっと稼げる』みたいな不穏なことも言ってた。こういう話題はほぼ家族でも語られないね」
複雑な感情のグラデーション
ただ、ヤクザに対する日本人の感情は複雑です。
「一方で、排除すべきという人、そもそもなぜ存在してきたかを理解していて『中国マフィアよりはヤクザのほうがまだ…』という人、理想化したり恐れたりする人、そもそも関わりたくない人、…とその間のグラデーションがある。」
アメリカでの意外な体験談
このヤクザの話にUltraFlyingTurtle(米)が興味深いエピソードを教えてくれました。
「祖母(東京出身)が1950年代に米カリフォルニアの仏教寺院設立を手伝いに渡米したんだ。60年代、思わぬ訪問者――ヤクザの人が来た。助けが必要で、話せる相手もいなくて、最後の頼みで寺に来たらしい。涙ながらに身の上話をした。」
その男性の話がまた興味深い。
「アメリカに行くためヤクザを辞める許可をボスに求めたら、怒られるどころか、ボスも仲間も送別会を開いてくれて、空港で万歳三唱で見送ってくれた、と。でも渡米したら仕事の話は嘘で、何もなかった。“恥をかいて帰るくらいならいっそ…”とまで追い詰められてたんだよ」
文化の根本:フィクションと現実の切り分け
日本独特の割り切り方
また、日本では根本的な文化への態度が違うことも外国人にとっては目新しいようです。
「日本ではフィクションはフィクション、現実は現実として"既定路線"で分けて考える。両者は切り離されがち。もちろん現実に影響を与えようとする作品もあるけど、それは例外」needle1
この意見に対してFew_Personality_8373が具体例を挙げます。
「『フィクションのキャラや物語が現実の犯罪や差別を悪化させる』みたいな主張への冷静さかな。例えば巨乳キャラを性差別だと叩く話が出ても、多くの日本人は『いやいや…笑』って反応になる。」
アメリカとの対比
でもQuintaCuentaRedditは違った見方を示します。
「これは日本だけの話じゃなくて、むしろアメリカとの差の話。あと、言われるほど一枚岩でもないと思う。つまり『日本人はフィクションと現実の切り分けが上手い』というより、どの国も程度の差でやってる。アメリカはポップカルチャーとの結び付きが強すぎて、日常への影響がデカいだけ。」
意外な発見:「それ、うちでもあるよ」現象
遠慮のかたまりは世界共通?
destiny56799が挙げた「遠慮のかたまり」には、世界中から「うちでもある!」の声が。
「日本語で言う“遠慮のかたまり”でしょ?みんなが最後の一切れを『誰かお腹空いてる人のために』って残すけど、実際は誰も取りたがらずに永久放置、のやつ。」
これに対して各国からユニークな反応が寄せられました。
「これはイングランドでもめっちゃある!スーパーで棚の最後の一個を、他の人のために残したりもする」funwithno-one
「スペインでも同じで『la aceituna de la vergüenza(恥のオリーブ)』みたいに呼ぶ。日本独特じゃないね」MongolianBlue
「メキシコでも、誰もがっついてる人だと思われたくないから起きがち。」TheFenixxer
一方でポーランドではこんな言葉があるようです。
「逆にポーランドは真逆。『最後まで食べる人は美しく滑らか』って言い回しがあって、食べ物は無駄にしないって発想」Faxiak
本音・建前も日本独特じゃない?
日本独特と言われる「本音/建前」についても、意外な反応が。
パラグアイ出身のEraiMHは冷静に指摘します。
「それ、日本だけじゃないよ。他の国だと表面的な礼儀、悪く言えば二面性とも呼ばれる。米南部には『表向きは礼儀正しくて、本心は言わない』ってステレオタイプもある。空気を読むも日本独特じゃなくて、英語だとreading the room。日本は間接さを多くの西洋国よりもう一段推し進めてるけどね。」
日本人のcurious_yak_935も同意を示します。
「日本人だけど100%同意。アメリカではwhite lie(※注:相手を傷つけたり、配慮したりするために言われる「罪のない小さな嘘」のこと)って言うし、向こうも普通にやる。本音建前は80年代、日米ビジネス界で流行ったバズワードで有名になっただけ。実際はそこまで違わないと思う。」
カタカナ語の発音問題:永遠の課題
16年住んでも「カップ」が言えない
アメリカ人のKrijali(米)の妻からは辛辣な一言はが。
「京都にいて、着物+袴の茶会までやってる。関西弁と標準語を使い分けてるくらいの日本語は話せる。それでも、妻に『あなた、カタカナの外来語は一生"正しく"発音できないよ』って言われた。どうやら俺は"カップ"は一生うまく言えないらしいw」
オーストラリア人のdottoysm(豪)は興味深い観察を。
「逆パターンもあるよ。英語ペラペラなのに『豆腐』だけ日本語発音で言っちゃう日本人、よく見る」
理解はできるけど受け入れられない問題
仕事への恩義という発想
アメリカ人のMortegris(米・日本3年)は、理解はできるけど納得できない文化について
「仕事文化で、会社に雇ってもらえた恩みたいなのを感じる発想だね。『仕事家族』のノリはアメリカにもあるし、適度な残業も分かる。でも突き詰めれば労働は取引。こっちは働く、会社は払う。ひどい扱いなら、辞めればいいだけなのに、なぜそこで罪悪感や不安が出るのかが分からない」
とコメントします。確かに「滅私奉公」や「過労死」は外国人には理解できない風習なのかもしれません。
結論:絶対的な壁はないけれど...
このスレッドを通して見えてきたのは、「外国人には“絶対”理解できない日本文化」はないかもしれないということ。むしろ個人の経験や努力、そして住む期間によって理解の深さは変わってくる、というのが多くの人の結論でした。
でも同時に、オノマトペのような言語的な壁や、ヤクザとの距離感のような微妙な社会問題は、確かに外国人には掴みにくい部分があるのも事実。
一番興味深いのは、「日本独特」だと思われていた文化が、実は世界各地にも似たようなものがあるという発見。遠慮のかたまりも本音・建前も、程度の差はあれど人間の普遍的な行動パターンなのかもしれません。
QuintaCuentaRedditの言葉が的を射ています。
「自分は自国文化だって全部は分かってない。だから日本の全部も分からない。つまり『外国人には絶対理解不能な日本の何か』があるわけじゃなく、個人の経験に依るってこと。」
結局のところ、文化の理解は外国人か日本人かではなく、どれだけその文化に触れ、学び、体験したかで決まるのかもしれませんね。